「オーリー」
ちょっとだけ非難めいた声に、今更ぴくんと肩が揺れた。
「も、申し訳ありません……」
「本当にね。どれだけ私が……」
先程と同じ台詞だったのに、今度はそれで正解だった。
どれだけ心配を掛けたか、迷惑を掛けたのか。
まして、今は成人を祝う記念式典が行われようという大切な時期だ。恐らく、皆止めただろう。
それを振り切って駆けつけてくれた。
「耐えていたと思う?傷つけられたきみを見て、腸が煮えくり返って、我を忘れそうだった。言ったとおり、未熟者だ。立場なんてなければ、きみが必死になって守ったものが見ていなければ。僕は自分を抑えられた自信がまるでない。……オーリー」
褐色の指先が頬を撫でる。
傷をどうにか避けながらも、本当は触れてしまいたいと言われているように、辺りを何度も往復した。
「隣国の王女に礼を述べたのは、クルル王の弟だ。ただの男である僕は、可愛い彼女にすごく怒っている。それ、しばらく忘れないでいてね」



