ニールの登場にすっかり大人しくなった騒ぎの原因は、彼がごく僅かに顎を動かしただけでいとも簡単に連行されていく。
今の今まで混沌としていた人集りも、巻き込まれるのを恐れて皆散ってしまった。
「まったく。きみに再会するには、とんだ状況だな」
苦笑いする声は優しい。
自惚れでなければ、いくらか甘いものも感じることができた。
「……っ」
でも、ちっとも嬉しくない。
言い過ぎかもしれないけれど、オーリーの心は想定していたほど弾んではいなかった。
「……申し訳ありません」
「それは、何に対しての謝罪かな?」
悔しかった。
今になって身体が震えるほど、怒りと悔しさが一気に込み上げてくる。
自分で守りたかったから。
ライリーを、この優しい夫妻を――憧れてやまないこの美しい森を。
やっとここに来られたのに、ニールが現れるまで何もできなかった自分への苛立ちを抑えきれない。
「ねえ、顔を上げて。よく見せてくれないか」
――ああ、やっと逢えた。
「――オリヴィア王女。ここに在るものの為に、貴女はよく戦ってくれた。感謝申し上げる」
夢にまで見た状況とは、かなり違うけれど。
――きみに逢えたんだ。



