虹橋の先へ



「ニール……!?」



いつの間にそこにいたのだろう。
轟音に掻き消されていたのか、あれほど恋い焦がれていたというのに、ライリーが彼の名前を呼ぶまでその姿を認識できていなかった。



「やあ。久しぶりだね、ライリー」



なのに今、一瞬にして森が静まり返っている。
彼の靴が落ち葉を踏むカサッという音すら、響いて耳に伝わるほど。



「これは一体どういうことだ。和平宣言は締結されたはず。トスティータとクルル。ましてや中間にあるこの森が、適用されぬわけがない」



ライリーへ向けた優しい眼差しや、柔らかな声音は記憶として残っているけれど。



「ニールさま……本当に……?」



男たちを睨むダークアイや、辺りを見渡し憂いながらも怒りを滲ませる姿は、見覚えのない知らない男性――。



(……ううん)



今や兄の手助けにとどまらず、国の再興と平穏の為に奮闘するクルル王弟――ニールその人だった。