(知ってる)
そこは、とてもとても綺麗なところ。
穏やかで、寒くも暑くもなく、少しくすぐったさを覚えるほかは誰にとっても居心地がいい場所。
(分かってたわ)
けして、それだけではないと。
翡翠の森は憧れだけど、理想の世界で終わらせてはいけない。
その狭い空間だけではだめなのだ。
トスティータとクルル。
互いに森を抜け合って、ずっとずっと先まで広げていって。
ふたつの国を一刻も早く、包んでいかなくてはいけないのだと。
「……理想郷」
それなのにまだ、こんなにも夢物語の部分が残っていた。――いや。
空想に胸踊らせるだけでいる、少女のままの自分が。
本来それでもいいのだと、レジーは言ってくれたけれど。
やはり、それは許されないのだ。
他の誰が認めてくれても、後々こうして自らが許せなくなる。
(……叔父様もそうだったのかしら)
それを知っているから。
もう経験してしまっているから。
『僕には僕の守りたいものが、守らなくてはいけないものがあるから』
――意味、分かってるかな、オリヴィア?



