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とぼとぼと歩く。
視線もただ床を追っているのに、複雑とも思える城内を迷わずに歩けてしまうのが嫌になる。
「もう何度目だよ。いい加減諦めたら?」
生意気な声に振り向くと、弟が馬鹿にしているのを隠さずに言った。
「フィル。諦められるはずがないでしょう?だって……」
「“だって、その間に別の女ができたらどうするの?”」
まだ可愛らしい声で心の中を代弁されてしまい、ぐっと詰まる。
「まあね。姉上の気持ちも分からないではないよ。ニール様は大人で格好いい。兄王よりも雰囲気が柔らかいから、人気も高いだろうね」
そう。
ニールは落ち着いていて穏やかで――皆に優しい。
あんなふうに微笑まれたら、誰しもドキッとしてしまうだろう。



