虹橋の先へ




いつかの三人組だ。
黒髪の女性を守るように、他の二人が囲んでいる。
声は苛立ちを含んでいるが、側に駆け寄ってすぐに気がついた。

皆、とても怯えている。



「あなたも、今は外に出ない方がいいわ。ここはまだ離れているけど、一人にならないで。彼氏がいるんだったっけ。しばらく外で会うのはやめた方がいい」

「……どういうことですか……?」



本当は訊かなくても分かっている。
とてもよくないことが起きた。
頭の片隅で理解していても、信じたくはなかった出来事。
もしかしたら、多くの人が忘れかけていたかもしれない燻り。



「小競り合いはよくあることよ。でも、今度のは……」

「……うん。暴動になるかもしれない」



それでも、三人手を取ったまま離れない。
けして壊れない、強固な縁だってもう生まれている。

――なのに。



「そんな……どうして」



自分の口から出た意味のない言葉に、ぎゅっと唇を噛んだ。

見えていなかった。
いや、知っていたくせに、綺麗なものしか見たくはなくて、目を逸らし続けていたのだ。



「……翡翠の森よ」