虹橋の先へ







・・・



「それらしくなってきたじゃないか」



テーブルを拭き終わり、つい先程まで大混雑だったのを表すようにあちこち向いた椅子を整える。
昼時を過ぎ、綺麗になった食堂を眺めているとそう声を掛けられた。



「ありがとうございます、ハナさん」



最近、本当にちょっと向いているのではないかと自分でも思うほど、順調に仕事をこなせるようになってきた。
何より、両国の人々と触れあえることが楽しくて堪らない。
ハナの宿屋は、その利便性から元々は二国の往来の拠点として使われていた為、今もその考えに賛同する人たちが集まりやすいというのもあるだろう。
想像していたよりも皆友好的で、こうして共に過ごすのは普通のことなのだと教えてくれる。
それを仕事を通じて見て、感じられるのが幸せなのだった。



「こりゃ、冗談抜きで坊っちゃんやアルフレッド様にお願いするべきかもね。お嬢さんを看板娘として……

「……だから、もう少しここで様子をみましょう。今、あの道を通るのは危険だわ。私たち、みんな」



カランと玄関の扉が鳴る音が、女性たちの声に掻き消される。
二人とも慌てて口を閉じたが、幸い彼女ちたちの耳には入らなかったようだ。


よかった――いや。



「……っ、どうしたんですか……!?」