「よーし、シーツも替え終わったし、後はー……」



客室を出て、一階の食堂へ向かうべくスキップするように階段を降りる。
あれから日が経つにつれ、違う仕事も任せてもらえるようなった。
残念ながら、料理の手伝いだけは追い払われてしまったけれども。
その分、部屋の掃除やベッドメイクなどは率先してやらせてもらっている。



「あら、オーリーちゃん。朝から偉いわね」

「あ、もうお帰りですか?」



品のいい老夫婦だ。
せっかく、こんなにいい時代になったのだからと、意を決してトスティータ観光に訪れたのだと聞いた。



「ええ、お世話になりました」

「いえ、そんな。またどうぞ、いらして下さい」



不馴れなことは一目瞭然だっただろうに、にこにこと見守ってくれていた。
きっと、失敗を見つけても気がつかないふりをして。



「ありがとう。そうね、こんなに近いんだもの」

「ああ、またいつでも来られるとも」



そういえば、二人は翡翠の森を抜けてそう遠くないところの出身だと言っていた。
本当に、また近く会えるかもしれない。



「はい、ぜひ。私もいつか……近いうちにそちらへ伺えるよう頑張ります」