虹橋の先へ



「互いの国に遊びに行く時は、大体三人一緒にいるからね。何かあれば言い返せるし、励まし合ったりもできるけど。そうだね、一人だと心細いかも。……やっぱり、現・国王陛下のお考えに納得してない奴らもいるから」



ドキッとして、発言者のトスティータの女性を凝視してしまう。



「あ、いや、さ。大分改善されてきたけど、反対者が一人もいない世の中なんて難しいってこと。でもさ、私たちとか、あんたと彼氏とか。そういうのも珍しくなくなってきただけでも、大進歩だよね。ジェイダさんだっけ?偉大だわ」



少し早口だったけれど、ジェイダはやはり有名人だ。
クルルの乙女――そんな信じられないほど理不尽で恐ろしい役目を撤廃させ、年頃の女性たちやその家族を救ったのだから。



「本当にね。それに……王子様に見初められるなんて、お伽噺みたい。ねえ、翡翠の森って、良縁祈願には向かないの?木の下でキスすると幸せになるっていうけど」



(……はは……)



話題が自分から逸れてきたので、注文を書き留めるとそっとテーブルから離れた。



「さあ。ま、結果的に人が集まるから、出会いの場にはなってるのかもね」

「私はやめておくわ。他人がいちゃついてるのを見に行くなんて。それに……」



そんなもの、叔父の口からでまかせだと教えてあげたいような――もちろん、言えないけれど。
だって、ここだけの話。
たとえ真実を知っていたって、そんなおまじないを信じていたい自分もいるから。