虹橋の先へ




心の準備ができたのを見計らったように、入り口のドアがカランと音を立てた。



「いっ、いらっしゃいませ……!!」



一人で店番なんて初めてで、ドキドキする。
それを言ったら、仕事らしい仕事だって今日が初めてなのだけれど。
せっかくハナが任せてくれたのだから、何かへまをして、すぐに彼女を呼びに行くことだけは避けねば。



「あら、ハナさんじゃないのね。見かけない顔だけど」

「あ、ハナさんは休憩中です。私は今日からで」



不馴れなことを嫌がるだろうかとヒヤヒヤしたが、特に気にした様子もなく席に就いてくれた。
女性の三人組。うち、一人はクルルの人だ。
真っ直ぐの黒髪に、アーモンドのようなダークアイは優しくてどこか色っぽい。
思考が思わず誰かのもとへ飛んでいきそうになり、慌てて注文を取るのに集中した。
でも、つい目がいってしまったのだろう。
バッチリ女性と目が合い、すぐに頭を下げた。



「す、すみません。えっと……その。つい、好きな人のことを思い出してしまって」