さて。
あの様子だと、まだロイは発っていないのだ。
つまり、チャンスはある。
早いところ車を見つけ、あわよくば乗り込んでしまおう。
「叔父様の車はどれかな?」
誰か付き添いで来ているだろうか。
ジン辺りなら、どうにか丸め込めないものか。
デレクは大騒ぎしそうだし、高齢だから来てはいないかもしれない。
「これだけど」
「あ、ありがと………」
素直にお礼を言いかけて、固まる。
優しいけれど、意地悪で皮肉めいたその声に聞き覚えがあった。
なんせ、久しぶりとはいえ、先ほど話したばかりだ。
「僕が奥さんに言えない忘れ物をしたって?……何のことかな、お嬢さん?」



