虹橋の先へ




金糸に揺れる、深紅の花飾り。
眩しそうに細める瞳が、言いようもない愛情を注いでいる気がして心臓が忙しなく鳴ってしまう。



「行こうか。そろそろ、アルフレッド様が騒ぎ出す頃じゃないかな。でも、もうプロポーズは済ませちゃったもの。如何に父君といえど、どうしようもないよね」



どうやら、挨拶よりも先にこちらへ寄ってくれたらしい。
きっと、母が時間稼ぎをしてくれているのだろう。



「あ。終わったら、翡翠の森に行こうか?伝説の真偽、確かめたいんだったよね」

「……そんなこと、言ってませんよ!!」

「あれ、そうだったっけ。じゃあ……」


迷うことなく、見せられた掌に手を伸ばす。
翡翠の森に行きたいとは言ったが、伝説を持ち出したのはニールの方だ。
第一、あれは翡翠の森の伝説というよりは、とある王子様の甘い作り話――……。



「……っ……」



無防備に触れた指先を掴むと、そのままもう片方の手で耳を包み込まれ――唇を奪われていた。



「伝説、待たなくていいね」

「……う、それはその……」



伝説なんていらない。
きっと、これからも作らない。
ただ、二人で歩んでいくだけ。
二国を繋いだ翡翠の森を駆け、今も皆で造っている途中のこの橋を渡ったその先へ。

それは大変だろう。
これまでもずっとそうだったように、辛くけして平坦ではない道のり。
そうだとしても、この気持ちは消えない。
今までも、これからもずっと。



「大好きだよ、オーリー。これからもよろしくね」

「……はい!」



ずっとずっと大好き。
あなたがいてくれて、本当に幸せ。


手を引かれて走り出すと、赤い花弁がひらりと舞った。
元気で美しい花に噴き出る水も弾かれ、滴が空中で踊る。
そんな光景をちょっとだけ呆れたように、しかし楽しげに誰かが笑った気がした。







虹橋の先へ・おわり