「そんなことって……でも、だとしたら、ニール様にとってはとても長い時間だったのでは」
自分にしたら、ついこの間の出来事。
でも、それが彼が子供の頃に体験したことならば、もうずっと昔のことだ。
その頃、まだオリヴィアは生まれておらず、もしかしたら母のお腹にいたかもしれない――そんな時期。
「そうだよ。本当に長いこと、僕はきみを……きみにこの記憶が生まれるのを待っていた。僕が成人する頃だと分かってはいても、どこか半信半疑だったけどね。でも、やっぱりマロが言ったのは嘘でも、空耳でもなかった」
《空耳じゃないよ!》
そんな声がしなかったか。
あの日、翡翠の森を抜けた辺りで。
「母君に確めてみる?あの時、妃殿下はきみの名前に迷われていたよ。男の子か女の子かでまた悩むと仰って……僕はそれが姫君だと宣言したんだ」
『貴女にとっては、つい最近ではないかしら』
(……ああ)
母も覚えていたのだ。
だから、そんな不思議なことを言って。
「無事に王女が生まれ、名前を兄から聞いた時確信したんだ。また、こうしてきみに逢えると」
「……っ。もちろん、お会いしたかったです。ニール様にもあの子にも。でもその、随分立派になられてしまって、何だか信じられなくて……」
本当にこれが、あの男の子の成長した姿なのだろうか。
にわかに信じられない内容よりも、そちらの方がいまいちピンとこない。
「それはどういう意味?これでも頑張ったんだよ。早くきみに釣り合う男にならなきゃって。だって、きみが僕に憧れてくれなければ未来が変わってしまうわけだからね」
首に腕をまわされ、ぐっと抱き寄せられる。
ドキドキしてつい漏れた本音が気に入らなかったらしく、ニールは後頭部に添えていた手を頬へと滑らせてきた。



