ぽかぽかする――その表現にはまだ遠い。
それでも、この庭で風を浴びるのが苦にならないどころか、ちょっと楽しい。
ましてや、あの子が自分に会いにきてくれるなんて。
今日は、彼の名前と誰と一緒に来てくれたのかを尋ねておかなくては。
そうすれば、次回は自分から会いに行ける。
(……なんて言ったら、また大騒ぎかしら)
カサッと葉っぱを踏む音がして、どことなく違和感を覚える。
だって、そんな。この音は違う。
この前会ったばかりのあの男の子は、フィルと同じくらいの年頃だった。
この地面を踏みしめる音は、それよりもずっとしっかりしていて、まるで大人のものだ。
(ううん、まさかそんな……)
オリヴィアには聞き覚えがあった。
そう、それはまるで。
あの日、翡翠の森で助けてくれたあの人の足音のようで。
どちらにしても姿が楽しみだと思うのに、なぜか怖くて振り向くことができない。
「やっと……またここに来られた。あの日の約束どおり」
『いつかまた、絶対に逢いましょうね。オーリー』
そんなはずはないのに。
夢みたいだと言い表すほど、時は流れていない。
まだ記憶に新しい、あどけないまん丸の黒い瞳が、なぜか最愛の人と重なる。
「ニール……様……?」
「うん。あの日、きみは言ったよね。大好きな人に会いにクルルに行きたいと。できることなら記念式典にも顔を出して、その側にいてもおかしくないような女性になりたいと。だから、僕は」
小さな男の子相手にそう愚痴を言った。
父に妨害されてはいるけれど、絶対絶対彼に会いたいのだと。
その子はまだ幼かったのに、会ったばかりの年上の愚痴を親身になって耳を傾けてくれた。
「誓ったんだ。きみにまたそう言ってもらえるような男になると。アルフレッド様が邪魔をされるようになるのは、あの日のきみに聞いて知っていたから、反対などされないよう万全を尽くして……と思っていたんだけど。そうこうしていたら、きみの方が飛び出して来ちゃって慌てたよ」
『オーリー』
声変わりなどまだ先の、可愛らしい声。
それを自分が覚えているなんて、どうしてあり得るだろう。
「信じられない?でも、僕は覚えてるよ。あの日、きみと話したこと。どうしてか迷子になった僕に声を掛けてくれたきみの方こそ、ずっと僕の憧れだったんだ」



