ニールの思惑は、ある意味効を奏したらしい。
曲が終わると、父がキャシディに詰め寄っているのが見えた。
「……落ち着け。オーリーがまだ若いことは分かっている。だが、ただ一曲踊っただけだ。さすがにそれだけでは孫は見れん。ひとまず安心しろ」
「ひとまず!?……いや、ニール殿があいつの婚約者であることは分かっているし、話を進めたのも私だが……。しかし、物事には順序というものが……」
(…………見たくなかった)
そんな暢気な会話を王様同士がしているあたり、確かに二国間は極めて友好だ。そうとしか言えない。
「順を追わせてやらなかっただろう、アルフレッド。ニールがああなったのは、悪いがそちらの兄弟の影響を多大に受けている。昔はもっと気弱で優しく、可愛らしかったのだ。逞しくなったのは嬉しいことだが」
子供の頃のニール。
いくら遡っても、当然オリヴィアの記憶のどこにも見つけることはできないけれど。
そういえば、これほど強引ではなかったなと改めて思う。
当のニールは、肩を竦めるだけだ。
「何はともあれ、諸々上手くいったかな。ねえ、オーリー」
そっと両手を握られ、少しだけ引き寄せられる。
ひそひそ話の必要もないほど、これ以上くっつくことも難しいくらい近いのに。
唇が耳に近づいてきて、固まってしまう。
「今度は、絶対に僕から会いに行くから。だから、脱走したりしないでいい子にできる?」
子供扱いにムッとして身を捩るけれど、上手くいかない。
それどころか、捩れていっそう絡め取られてしまう。
「……いいえ。だって、私また来たいんです。一度見て終わりになんてしたくないから」
ニールに会うだけじゃない。
他にもたくさん、ここには魅力的なものがある。
辛いことも、まだ悲しいことも多く残っているけれど、それならば尚更。
「そうだね。でも、そこは僕に会いにって言ってほしいなあ」
然してそう思っていないことが伝わってきて、つられて笑う。
「ニール様には、絶対に会えますから。あ、でも、ご迷惑でなければ……」
「ん?」
どうせ子供扱いされたのなら、ひとつだけおねだりしてもいいだろうか。
「もう一度、翡翠の森に行きたいです。ニール様と一緒に」
「もちろん。あれ、何か伝説があったんじゃなかった?それ、試してみたいんだけど……オーリー、何だったか知ってる?」
(本当に意地悪……!)
可愛かったというニールに会ってみたい。
そう思うほど、目の前の彼は憎らしいけれど――。
(……やっぱり、すき)
――逢えてよかった。



