「上手だね、オーリー。クルルの曲は初めてでしょう」
「ダンス自体は仕込まれましたから。でも……ニール様が、その」
こんなことになるなんて聞いていない。
鬼のキースにしごかれたことが、今になって役に立つとは。
それでも聴き慣れない楽器とテンポの速い曲調が難しいのと、そもそも周囲のざわめきと気恥ずかしさで上手くステップを踏むことができない。
「私が?」
さりげなく広場の中央に誘導し、皆に見せつけるようにリードされている。
「………意地悪だからです!」
「僕から逃げた罰。さっきだって、アルフレッド様とのやり取りを見ていたくせに」
仕返しとばかりに、背中に回した腕にぐっと力を込めてくる。
よろめきそうになって、側にあった肩に掴まるとニールは満足そうににっこりした。
「それに、手伝ってくれるって言ったのは嘘?」
「う、嘘じゃありません。でも、これのどこが……ただの腹いせじゃ」
これが何の手伝いになるというのか。
つい漏らした本音を慌てて飲み込んだが、ニールは更に意地悪に笑う。
「心外だな。言ったとおり、これで全部片づくのに。ほら、見て」
「い、いやです」
身内のニヤニヤした顔も、姫君たちの泣きそうな顔も怒った顔も怖くて見られない。
「二国間は極めて友好だと、きみの相手は僕だと、これでこの場にいる全員が分かる。おまけにというか、個人的に一番重要なのはお父上がこれで認めざるを得ないことだ」
「……………二国間は、のところ以外、ちっとも理解できないのですが」
ニールの婚約者のお披露目ならまだ分かるが、どうして自分主体の話になっているのか。
ニールを婚約者として進めてもよいかと言われたのは、もうかなり前のことだ。
その時既に淡い恋心を抱いていたからものすごく嬉しかったし、逆にニールに申し訳ないのではと何度も確かめたものだ。
彼もそう望んでいると伝えてくれたのは、他ならぬ父だったのに。
「これだけ公衆の面前で触れておいて、僕に責任を取らせないわけにはいかないでしょう。アルフレッド様は、他の男にきみを渡すなんてもうできないよ。ある意味、既成事実」



