「あっ……!」
小さな叫び声があちこちで飛び、緊張感が走る。ニールが壇上を降り、人混みの中挨拶にまわるのだろう。
何となく顔を上げにくくて、彼がいるはずもない後ろを振り返った。
ジェイダにラリー、ビー。
それから、ジンとレジー夫妻も。
おめかしした兄妹の可愛らしいこと。
そうだ、向こうへ行ってしまおう――……。
「オリヴィア」
手首を後ろ手に引かれ、トンと後頭部をぶつけた。
「主役である私を放って、どこに行くの」
それがニールの胸だと気づいた時には、耳がそこらじゅうで聞こえる悲鳴を拾っていた。
「え、いえ、その」
「こういう時こそ、駆けてきてくれてもいいのに。酷いな。今、逃げたでしょう」
確かに、呼ばれもしない時には押しかけておいて、正式に招待された今逃げるのはおかしな話だ。でも、何だか居たたまれなくて。
「え、と、……お忙しいかと」
招待客の相手だけでも大変だ。
失礼があっても困るし、優位に立たれるわけにもいかない。
ただのお誕生会ならいざ知らず、いや、仮にそうだとしても面倒事は減らない。
オリヴィアとて、幾度となく似た経験はある。
「そうだね、私は忙しい。でも、きみが手伝ってくれたら、いっぺんにほぼ全ての用が済むよ」
ジトッと睨まれたのは、それが言い訳だとバレバレだから。
「私がですか?もちろん、私にお手伝いできるのなら、何でも……」
思わず見上げたしまった流し目に、まずいと思って手を引っ込めたが、随分遅く。
撤回させないと強めに捕らえられた指に、やけにゆっくり口づけか落ちてきた。
「それではぜひ。……ほら、曲が始まる」



