肩を竦める父に丁寧に礼を取り、ニールは準備へ戻っていった。
彼の背中をもう少し見つめていたかったけれど、父に気づかれそうでオリヴィアはその場を離れることにした。
グラスに飲み物が注がれる音や、然して意味のない挨拶に耳を澄ませていると、広い会場に集った人々はおよそ二つに分類されるようだ。
純粋に、ニールに憧れの視線を注ぐ者。
ニールそっちのけで、はてさてこの中の誰が優位に物事を進められるだろうと探る者。また、自分はどれくらいの位置にいられるのか計る者。
共通しているのは、然して式自体に興味を示していないことか。
それも、仕方のないことかもしれない。
現状、国王であるキャシディの力は強く、安定している。
加えて、昔と比べて降水量も増え、急速な改善は見込めないものの、生活しやすくなってきている。
トスティータとの友好関係を望まない人間を除いては、特に不満は挙がっていないはずだ。
そうなれば、今回の成人の儀は単純にただおめでたいもの。
人々の関心が出世や王族との婚姻に集中するのも、ある意味自然なことかもしれない。
「ねえ、どこもおかしくない?」
「ああ。式ももうすぐ終わるし、そうしたらニール様も近くにいらっしゃるだろう。愛想よくな」
ここからでは遠いとはいえ、主役が集まってくれたお礼や、今日を迎えられたことへの感謝を述べているもいうのに、わりと大きなひそひそ話が聞こえてきた。
どうにか娘をニールの目に留めようと、意気込んでいるらしい。
呆れはするが、彼女の気持ちも分かる気がする。
ここに来るということは、何にせよ結婚相手は家の事情が絡んでくる。
親から告げられた名前が、強欲な親ともそう変わらない年寄りではなくニールであれば、この機会を逃したくはないのも当然だ。



