すっかり準備が整えられた会場。
もう間もなく始まろうかという頃であるのに、招待客たちは思い思いの行動に出ていた。
言うまでもなく、そのほとんどは主役であるニールはいつどこから現れるのだろうと目の端で探っている。
(何度か経験しても、こういうのって慣れないものだわ)
連れてきてくれた男性に頭を下げながら、オリヴィアは苦虫を噛んでいた。
この中の一体何人が、今日の日を単純に祝っているのだろう。
何もかも、政治と無関係ではいられない生い立ちにニールは既に慣れてしまっただろうか。
もう少し若かったロイは、父は?
それに、今現在の彼らは――。
「おい、嘘だろ」
「ええ、まさか本当に……」
何かあったのだろうか。
急に周囲がざわめきだし、それでいてピンと空気が張りつめている。
これほどざわざわしているのに、誰かの息を飲む音すら聞こえてきそうなほど。
「……っ……!!」
慌てて飛び出したらしい、バタバタとした足音。カツカツと鳴る靴音は、急いていてもなおその人物の気品すら窺える。
それに何より、その少し上がった呼吸だけでそれが誰だか分かってしまった。
(ニールさま……)
「私が現れただけで、そう慌てることはなかろう。こっそり参列させていただこうと思ったのに、おかげで目立ってしまった」
(…………と、お父様!?!?)



