それに、もちろん。
「オリヴィア王女ですって。噂通り、元気で可愛らしい方ね」
周辺国の思惑など別にしても、単純にニールは素敵な男性だ。
容姿に恵まれ、それでいて偉ぶることもなく。いつだったかフィルが言ったように、兄であるキャシディよりも気性が穏やかで親しみやすい。いい意味で、側に寄りやすいのだと思う。
揶揄された頬の傷と短い髪に触れそうになり、きゅっとその手を握る。
(隠さなくていいのよ)
恥じそうになった自分に、もう一度問いかけてみる。
たとえ、事前に招待状を手にしていたとしても同じことだ。
またあの場面に出くわせば、何度だってあの場へと駆けていくし、何度だって間に入ることだろう。
「オリヴィア王女?」
案内をしてくれる男性が、足を止めたオーリーを振り返る。
彼の耳に入っていなくてよかった。
主の婚約者の悪口など聞いてほしくないし――ニールに知られるのも嫌だった。
「いえ」
答えが変わるはずもない問いならば、これ以上悩む必要はない。
分かってはいてもつい、ニールと同じ年頃の姫君たちが眩しくて目を瞑ってしまいたくなるけれど。
(……行こう)
あの人のところへ。
雨が降ったばかりの足下はぬかるんでいて、時折転びそうになる。
それでも、どうにかゆっくりでも歩いていけば彼に会えるのだ。
それにきっと、彼もこちらへ向かって来てくれている。



