虹橋の先へ



この部屋で大人しく待っていても、何も変わらない。
意思は固いのだと伝える、いい機会だ。


荷物は最小限に。
ニールに会うことを考えて、ほんの数着のお気に入りを忍ばせたほかは普段着だ。
ちょっとだけ不安だけれど、そう言ってもいられない。
ニールとの距離がこれ以上遠くなることを思えば、踏ん切りもついた。



――脱走の。


ロイが報告に来た日は、父とキースが話し込むのが通例である。となれば、今日は絶好の脱走日和だ。



(行くしかない。今日しかないのよ、オーリー!!)



少なくしたとはいえ、重い荷物を背負い部屋を飛び出した。
うるさいフィルは、二国の正しい歴史と今後について勉強中。
お転婆姫がいつも通りおかしな動きをしていることなど、誰も気に止めない。



(走れーーーっ!!!)