『結び目』


俺は帰り道、忘れ物に気づいて走って取りに戻ったんだっけ。


もうすぐ最終下校の時間で、もうほんとに急いでたんだよな。



教室の前にさしかかったときに、人影が見えて、
立ち止まったんだ。



小さめの背のサラサラボブの女の子。


ただ真顔で、夜空を眺める。


まるで、どこにもない何かを探すようにただじーっと暗い空を見ていた。


たしか、同じクラスの、、


「しんじょうあい、、?」



愛はその頃から明るくて、クラスを盛り上げる人だった。


いつも笑顔を絶やさなくて、嘘っぽくなくて、


それなのに、なぜか、今の新庄は、

ほんとに新庄かと思うくらい、


どこか切なげで、儚くて、でも、とても



ー綺麗だと思った。



一瞬で恋に落ちた。


新庄には、なにかあるのではないか。


何かがどんなものでも、そのなにかを含めて、新庄を心から笑顔にしたい。


そう思った。


「久留須くん、、?」

ふいに振り向いた新庄は、いつもの笑顔で聞いたんだ。


「うん。」

「くるくるってなんか可愛いね」

ニコッと笑う君は、悪いこと全て忘れてしまうくらいに、可愛いと思った。


そんな君に、本音が漏れてしまった。


俺の作り上げたものを壊してもいい。


この人に、包み込んでほしい。


「俺、くるくるって呼ばれるの好きじゃなかった。
でもね!今好きになれた。」


ボロボロと出る本音。


「笑笑。ならよかった。
なんて、呼んだ方がいい?」


少し困った顔の君。

そんな君さえも、好きだと思ってしまう俺は既に重症だ。

「みやでいい。」

「みや、、。なんか新鮮!笑笑」

いつもの笑顔。


どこか物足りないような顔が嘘のように。

「私も、愛でいい。」


「愛、笑笑。新鮮だ。」


これが俺が恋に落ちた日だ。


そして、俺が新庄を、愛を心から笑顔にしてみせる。そう決めた日だ。