『結び目』

西崎が泣いている間、愛は困った顔で見つめていた。


「ねえ、晴翔?そんなに泣かないでよ。
唯葉が心配しちゃうよ?」

聞こえているはずもないのに、愛の言動は的をいていた。

そして、案の定晴翔はもっと泣き出した。

さすがに愛も悲しそうに、晴翔の背中をさすっていた。

「とりあえず、部屋行こ。」

俺がそう言った時には西崎はもう泣き止んでいた。

「筆談でいいかな。」

そう言って紙とペンを出す西崎はもういつもの西崎だった。

何から聞こう。聞きたいことが多すぎる。

でもやっぱり、、

『愛はなんでいなくなったの。』

その瞬間、愛の顔はみるみる歪んだ。

震えた手で、あの時と変わらない丸っこい癖字を紡いだ。

『唯葉が死ぬのを見たくなかった。』