『結び目』

大学生に向けて、受験勉強を始めた、高2の夏。

俺は進路に悩まされ、母に責められ、父に急かされ、
精神的に追い詰められて。

唯葉のこと以外で泣いたのは初めてだった。

お母さんともお父さんとも喧嘩し、責められて、


この夜は明けないんじゃないかって。

不安になったとき。

今日って、唯葉の月命日ってことを思い出して、
藁に縋る思いで、唯葉の墓に行ったんだ。

朝焼けが綺麗に見える時間帯で、俺の心は少し、癒されて。

これも唯葉が励ましてくれたのかななんて、。

知らないうちに涙が溢れて、

唯葉の墓が見えた時。

女の人が唯葉の墓に手を合わせてたのが見えた。

唯葉に似た顔の細くて、サラサラの長い髪の人。

綺麗な横顔だな。

そして、俺はこの人を見たことがあったんだ。

「愛、さん、、、?」

正直、こんなボロボロの自分なんて、見られたくない。

けど、知りたい。

愛さんは聞こえなかったかのように、反対側に歩いて行った。

見間違いかなって、思ったけど、
違ったんだ。

「あ、、いつもの、」

いつもの花束。

やっぱり、愛さんだったんだ。

「ありがとう、、っ。ございます。」

俺は泣くしかなかった。

その日から俺は進路に迷うことなんかなくなって、
唯葉のおかげかななんて、思ったりして。

でも、久留須先輩にこのことを伝えることはなかった。


なんとなく、あの人達は会える気がした。

またどこかで、違うかたちでも、きっと会えるんじゃないかって。

そして、会ってほしいなって。

それが俺の手じゃないほうがいいのかなって思ったんだ。