『結び目』

「ねぇー、はるとくぅーん♡」

「なんすか!」

なんか、俺はモテるらしい。

愛さんにも言われたことがあったが、特に俺はそう感じたことはなかった。

俺に必要なのはずっと唯葉で。


唯葉だけで。

今でも。

ずっと、

きっと、一生。


ー忘れられないこの気持ち。


だから、俺は。

「今日暇?」

「すいません。忙しくて!」

俺は、前に進めない。


ずっと唯葉に囚われている。

でも、悪いこととは思わない。

でも、あの時と変わったことがある。

「お!!西崎!!一緒にクレープ食べに行こ?」

「行きます!!」

可愛い久留須先輩と、俺は親友になった。

暇があったらお互いの家を行き来したり、カフェに行ったりして。

唯葉のお墓参りにも時々行って。


久留須先輩は歩き始めている。

あの時から、久留須先輩は変わってないけど、

唯葉のことを思い出して泣くなんてことがなくなって、むしろ〜だったよねって。

笑って言ってて。

唯葉の死が過去になっていってて、前に進んでる。

時間が経ったんだなって、そう感じる。

唯葉のことはいい思い出となって。

でも、俺にはできない。
あの頃から何も変わってない。

動けていない。


俺にとって、唯葉は、生きる全てだったから。

いまだに唯葉を思い出して、泣くなんてしょっちゅうで。

久留須先輩も誘わずに、ただひたすら、唯葉の墓の前で泣いたりしてたんだ。

俺たちは唯葉のお墓参りにしょっちゅう行っていたし、俺も1人でも行っているのだが、不思議なことがあった。

毎月の唯葉の月命日。

必ずと言っていいほど、綺麗な花束が、たむけられていて。

イタズラとかじゃ絶対なくて。

綺麗で、キチンとしていて。

愛さんかなって、思ったんだ。

きっと久留須先輩も。


でも、愛さんはとっくに、ここにはいないし、来ることはない


って、先輩は思ってるんだと思う。

でも、俺は絶対愛さんだと確信していた。

親はそういうタイプではないし、
愛さんは、唯葉の為なら南極だって、宇宙だって行く人だから。

「愛さん、ありがとうございます。」

進めない俺は、花束を見て、また泣くんだ。