『結び目』

「唯葉、唯葉!ゆいは!」

てのほどこうしようがない。

医者にはそう言われた。

無理なんだと。

それでも、俺は信じたかった。
「唯葉。ゆいはぁ」

最後の最後まで、呼び続けた。

「はる、、と、?」

「うん、唯葉!」

唯葉はギュッと手を握りしめて、引き寄せた。

「はると、、、あ、


ー愛してる。」

「、、っ、!!」

俺の涙腺は崩壊した。

「愛してるよ。俺の方が。言わなくて、卑怯でごめん。世界で誰よりも、愛してます。」

ボロボロに泣きながら、不恰好で、ボロボロだったけど、唯葉はニッコリと微笑んで、目を瞑った。

唯葉と話したのはこれが最後になった。



翌朝、唯葉の容態は急変、亡くなったと聞かされた。

唯葉のこととなると俺の涙腺はおかしくて、
枯れるんじゃないかってくらい泣いた。

いつのまにかきていた久留須先輩と抱き合いながら。

久留須先輩も涙を流していた。

穏やかな顔で。

反対に俺はボロボロだった。

そのあと、俺は生きる気力を失って、学校に行かなくなった。

母さんが話しかけても、誰に何を言われようと、動かなかった。

唯葉の葬式以来外に出ることもなくなった。

久留須先輩が来たときもそうだった。

困ったような、優しい笑顔を浮かべていた。

正直、この人に全部ぶつけたいと思ったこともあった。今、1番、俺を理解してくれるのはこの人じゃないかって。

でも、久留須先輩を傷つけるわけにはいかなかった。

愛さんに合わせる顔がなくなる。

っていないんだけどね。

愛さんは唯葉が亡くなっても、お通夜も、お葬式にも来なかった。

その代わりにお母さんとお父さんを見た。

見たのは2年ぶりだった。

「お久しぶりです。」

俺は睨まざるを得なかった。

あっちも少し罪深い顔をしていて、

「お久しぶりね。」

とだけ言っていた。

唯葉ちゃんの遺体を目の前にしてもあの人たちは涙ひとつ流さなかったことには何も感じなかった。

久留須先輩のことは俺が招待した。

綺麗な花束を待っていた。

そして、隣の家から表札がなくなった。

どうやら家は間抜けの殻だったらしく、誰も住んでいなかったため引き払ったそう。

でも不思議なことがあった。

唯葉の月命日、お墓には花がたむけられていた。

久留須先輩と一緒に行ったので、久留須先輩ではない。

だとしたら、愛さんかなって。

連絡はつかないそう。

両親はぷんすかしていたが、そんなことはどうでもよかった。