『結び目』

唯葉は俺の唯一の幼馴染で。


俺の1番、唯一、愛する人だった。



俺と唯葉たちの、家は隣同士。


なにかあればすぐに会いにいける距離。



病院のことも考えてか、家から病院までは徒歩3分ほど。

俺たち一家はただのお隣さんだ。



2年前のある日。

寒かったか、暑かったかも覚えていないあの日。


隣の家から怒声が響いてきた。


「お前がいなければ、唯葉の治療費がなければ」と


すぐに唯葉の家だとわかった。

とは言っても、唯葉はここにはいない。


でも、あの家の人たちは俺にとっては家族だから。


家を飛び出て、すぐさま、インターホンを鳴らした。



「あ!ヤッホー!晴翔、久しぶりだねぇ。」

明るい愛さんに少し安心していた自分がいたのは事実だ。


「ヤッホーじゃなくてさ、大丈夫??」


「うん!全然?」


「なにかあったら言ってね。」


「うん、ありがとね。」



逆光だったとはいえ、このとき、愛さんの涙に気づかなかった俺、

西崎晴翔では、唯葉を幸せにすることなんてできないと思う。





「おはよ、唯葉」

「おはよう、晴翔」


学校がない日は朝から夕方まで。



唯葉が嫌そうな顔をするまでいる。

それがいつのまにかつくった僕のなかの勝手なルールだった。



お姉さんと、僕は同じ高校で、お姉さんはいつ見ても、学校でも、家でも元気いっぱいのはちゃめちゃ
JKだった。


無理矢理笑顔でもなく。


天真爛漫が似合う嫌味のない弾けた笑顔。



唯葉の前では少し、お姉さんを印象付けるおとなしめな笑顔。



気を遣われてるかも、と唯葉から言われたこともあったが、いつもそれ以上に元気だよと言うしかない。



本当の、笑顔かなんて、わからない。


もしかしたら愛さんもわかっていないかもしれない。



でも、僕から見た事実は、愛さんが常に笑顔を絶やさないということだけ。



唯葉は俺の気分があまり優れないとき、気づいて、
帰った方がいいんじゃない?とか、気遣ってくれる。



気遣ってくれてありがとねと言うと、


でも、お姉ちゃんのはわからない。


感情の起伏がないからと愛さんを心配するそぶりをみせていた。


愛さんも、唯葉の笑顔いつ見たかな。


私迷惑かなって。毎回言ってて。



お互いを愛す2人にすこし、笑みが溢れる瞬間だった。



2人は違う意味で真逆だ。



唯葉はどちらかというと喜怒哀楽が激しくて、

ふてくされたり、笑ったり、怒ったり。

そして、姉思いなのが裏目に出て、愛さんの前では常に無表情で。



愛さんは明るいけど、喜怒哀楽がなくて、常に笑顔で笑ってて、嫌味がなくて。

唯葉が大好きで。

唯葉に、心配かけたくないのか、常に笑顔で。



ほんとに真逆。


でも、俺はそんな2人が大好きだ。