『結び目』

愛はあれから来なくなった。

唯葉ちゃんは心配していた。

別に、いいのと言っていたけど。
西崎もきっと気づいてる。

でも、あいつは強い。唯葉ちゃんの言うように。
ひとつも顔に出さない。


寂しいとか、苦しいとか、不安だとか。


きっと少し気づいている唯葉ちゃんの病気のことも。

でも、あえて助けない。きっとそうされることを望んでいないから。

唯葉ちゃんに言われているから。



そして、愛が来なくなって2週間ほど経った日。


愛は学校に来なくなり、転校した。
俺たちは、あの日から一言も話さなかった。

愛は変わっていった。
気性が荒くなり、些細なことで怒るようになった。

あれだけ綺麗だったボブは今では肩くらいで跳ね上がっている。

俺が愛を見たのは、この日が最後になった。


唯葉ちゃんはその頃から、ほとんど目を覚まさなくなった。

けれど、親は来なかった。
愛も来なかった。

手紙なんて、どこにしまっているんだろう。

聞こうにも聞けなくて、八方塞がり。

唯葉ちゃんが目を覚さない間も、西崎は元気だった。
いつも笑顔を絶やさなかった。

俺にも、友達にも。

でも、きっと、限界まできているんだとは感じる部分があった。

少し疲れているように感じる。

クマも少し。

でも、

「昨日、隣の家に明かりがついていたんです!
で!表札まだありました。まだいると思います!」

俺を気遣ってくれたり、。

「唯葉!!今日も楽しかったよ。また来るからね。」

起きない唯葉ちゃんに、めげずに話しかけたり。

元気で。幸せそうだった。

俺もめげることなく、唯葉ちゃんの見舞いに来続けた。


今日、スーパーで、愛を見た気がした。

でも、すぐにいなくなった。

俺の精神も、もうそろそろ崩壊しそうだった。

めぐるましく変わる毎日を俺はまだ受け入れられない。