『結び目』

「あの、私、実は、、余命一年なんです。」

私、余命一年なんだよね。

宣告されたのは、文化祭の前。

ほんとは行くか迷ったんだけど、最後になるかもしれないからって。

倒れちゃったんだけどね。

私はこれを、お姉ちゃんでもなく、晴翔でもなくて。

無関係な久留須さんに打ち明けた。

「そうなんだね。」

久留須さんは顔を歪めてはいたけど、優しい笑顔をむけてくれてはいた。

きっと心配させないようにだと思う。

優しいこの人なら。
きっと、断れない。

だからそれを利用した。

「私が、死んだら、手紙を渡していただけませんか。
お姉ちゃんと晴翔に。私言ってないんです2人に。
大好きだから。大好きなんです。だから、言えなかった。」

「わかるよ。わかった。」

ニコッと苦し紛れな笑顔。

「でも、言えばいいのに。直接、話すからこそ言えることも「あの、多分、両親死ぬまで来ないと思うんです。」

「あと、来てもずっといる可能性は極めて低い。
何があったのかなんて、わからないです。でも、何かあったのは事実だと思います。
だから、お姉ちゃんを支えていただけませんか。」

「晴翔はきっと大丈夫。あの人は強いですから。
きっと、生きていけます。でも、頼ってきたら、
力になってあげていただけませんか。」

私は精一杯、頭を下げた。

シーンと静まり返る部屋。

私がそっと顔をあげると、優しく微笑む久留須さん。

「わかった。でも、いいと思う?ほんとにそれで。
後悔、しない?」

「もう、すでにしてます。
言えばよかったなぁって、。でも、いいんです。
この先お姉ちゃんが笑えれば。それで。」

私がお姉ちゃんから笑顔を奪ったなんて知らなかった。

いつのまにか、久留須さんはいなくなってて、お姉ちゃんと私の2人きりになっていた。