『結び目』

「おっはよー!!」



私は今日も空元気。



「えーあい!また学年一位!?凄すぎる!!!」

「えー??そんなことないって笑笑」



いつのまにか出来上がってしまった私のキャラクター。


明るくて、賢くて。



そんな人を演じるの。



まあでも普通に楽しんでる気もするのね。





「たっだいまー!」

私がいつも学校から1番に行くのは唯葉の入院する病院。



唯葉からしたら気を遣われてるとか嫌かもしれないけど、親が唯葉や私に全く関心を示さないので、

私が親の代わりに少しでもなれればなって。



元気なのは、唯葉が暗い気持ちにならないように。


私たちに嫉妬しているのかもしれない。


それとも甘える方法がわからないだけかもしれない。


そんな唯葉はいつも無表情で、すこし眉間に皺を寄せる。


それでも少しでも、元気がでるように。


心配させないように。


そして、笑顔になれるように。


私はかなりのシスコンで。

晴翔もかなり唯葉思いだ。


でも、もしかしたら私たちに嫉妬心を抱いているかもしれない。




どうしたら唯葉がいい気持ちでいられるかな。

考えながら手探りの言葉。



いくらポケットを探しても、インターネットを駆使しても見つからない

ー唯葉の幸せの言葉。



親は来ないの。


「ただいま。」

当然返ってくる声はない。

実は家には誰もいなくて。

唯葉には言っていないが、2年前、両親が離婚。



原因は、、




双方の浮気だった。




そのとき、お父さんたちが責めたのは、
浮気した自分でもなく、浮気された母にでもなく、



ー私と唯葉だった。



「どうして、生まれてきたんだ。

お前たちさえいなければ。

唯葉の治療費がなければ。

お前の育児にかかった金がなければ。」



なんども責められた。



なんで、どうして、どうして私たちが責められないといけないの?

悪いのはお母さんたちでしょ?

私たち、何かした?

ただ、あなたたちが望んで生まれてきただけ。

どうして?どうしてなの?

何度思ったか。言葉にできないほどの感情が私の中で発することをしらずにこだまする。


一向に忘れられないあの悪夢を、これからも胸にしまって、


唯葉の幸せをただ単に願うと決めた日だった。


唯葉は知らない。



知らないほうが良い。


唯葉は知りたいかもしれない。


でも、知りたくなかったと言われてからじゃ遅い。

いつか、全てを話すときが来ると思う。



そのときまで、、。





学校の方はめっちゃ元気に行ってる。


毎日アホみたいに笑って、はしゃいで、別に嫌いだった訳じゃない。


でも、何かが、言葉にも感情にもない何かが。


私には足りなくて。



いつもどこか空元気。


そんな私に一歩を、歩み出す力をくれたのは、みやだった。

放課後に、よく、なにも考えずにただぼーっと窓の外を見ている。そんな日がある。


その日も、みやと仲良くなった日も、ただぼーっとしてたの。



どこか寂しくて、虚しいこの世界の沈む瞬間を。

足りない何かを探すように。


ただぼーっと。1人で、見つめていた。



「しんじょう、あい、、?」

後ろから、聞きなれない声が聞こえてきた。

誰も来ないと思ってたんだけどな。


「久留須(くるす)くん?」


あまり話さない久留須宮くん。


みんなからくるくると可愛いキャラで慕われる彼。

「うん。」


沈黙が耐えられない性格の私は、


「くるくるってなんか可愛いよね。」
とりあえず浮かんだ話題を。



いつものスマイルをつけて。


「俺、くるくるって呼ばれるの好きじゃなかった。
でもね!いま好きになれた!」


ニコニコと笑う彼を見て、見つけたと、思った。

何故か、見つけたって、私の居場所はここかもって。


「笑笑、そっか!よかった!
なんて呼べばいい?」

話題を間違えたかもな。

そう思っても遅いことくらいわかってる。


「みやでいい。」

呼び慣れないあなたの名前。

「みや、、。なんか新鮮!笑笑」


困った時はとりあえず笑う。

いつの間にか染みついた習慣で、唯葉を思い出す大事なおまじない。




ー笑顔が周りを笑顔にする。



唯葉が昔、病室で読んでいた本の中で、何度も何度も読んでいた本のページがあった。


大好きなフレーズなのだと教えてくれたこの言葉。



きっと覚えてないだろうけど。
私にとっては大事な思い出なんだ。


「私も愛でいい。」

「愛、、笑笑。新鮮だ。」


パズルの無くしたピースが。


なかったピースがハマった気がした。


不思議な彼を意識しはじめた瞬間で。

これが恋だと気づくまでの道のりのスタート地点だった。

そして、彼は私の居場所になった。