『結び目』

「文化祭来ない?唯葉。」

私は演劇部で、言ってないけど、今度主演で。
きてほしくて。

唯葉に楽しいって。
面白いって思って欲しくて。

がむしゃらに考えた結果が、主演だった。

今までの役のセリフ量とは比にならなくて。
しんどくて。

でも、やっぱり唯葉に見て欲しくて。

頑張ったんだ、私。

宮もずっと応援してくれてて。

あ、宮も同じ演劇部。宮は脚本を書くの。
すごく、面白くて。

才能に、恵まれているとは宮のことだと思うほど。

唯葉に見せたいと言ったときにいいね!と一番に言ってくれたのも宮だった。

でも、唯葉は。

「いや、高梨先生に相談してみないとわからない。」

嫌なの?文化祭。

「行きたい?」
「別に。」

そっけなく、いつもの無表情で言われたときはそれは
落ち込んだよ。

ちょっとくらい、きてほしかった。

唯葉に、見て欲しかった。

唯葉にまた、笑顔になってほしかった。

晴翔は唯葉の笑顔を見てるのかな。


ー唯葉の中で私はどれくらい大事ですか?

晴翔は気を許せるの?
私、お姉ちゃんだよ。

負の感情が連鎖して。
耐えきれなくて。

いつもより早く。
晴翔が帰ると言い出す前に。

「ごめん。今日はもう帰るね。
ちょっと用事があって。」

久しぶりの苦笑いは、いい気持ちがしなかった。