普段は宗吾が一度へそを曲げると、機嫌が直るまで数日かかることが多く、同じ家の中で無視されたり冷たく当たられたりするのだが、今日は声をかけてもらえた。
でも、カフェバーでのことを蒸し返すと、この平穏な空気が壊れてしまうかもしれない。ほっとしつつも、薄氷を踏む思いで七瀬は笑顔を作った。
「ただいま」
「七瀬さ、明日からもう弁当は作らなくていいよ」
「え?」
嫌みで言われたのだろうかと用心したが、彼の表情をじっと観察していたらそうでもなさそうだ。
ひとりで先に帰って、冷静に考えてくれたのかもしれない。
「毎日、朝早いのに大変だもんな。会社の近くにキッチンカーも来るし、割と安い弁当屋もできたから、そっちで済ませるよ。たまには社内の人間とランチに行ってコミュニケーションを図るのも大事だし。これでも、プロジェクトマネージャーだから」
「宗吾さん、マネージャーさんだものね! 負担はかけちゃうけど、でも必要なときは言ってね、できるだけ作るようにするから」
負担が軽くなることはもちろんうれしいが、宗吾が七瀬の仕事のことを前向きに捉えてくれたことがうれしかった。
「うん、ありがとう」
ありがとうという言葉の尊さを、改めて噛み締める。お互いに労り合えれば、結婚しても困難を乗り越えていけるだろうと思えるから。
宗吾とはどきどき意見が噛み合わず、その度にモヤッとしてしまう自分の気持ちを平らに保つことに意識を傾けてきた。
でも、人間が二人以上集まれば、意見の衝突や習慣の違いからぶつかることもあるだろう。それでも、宗吾は縁あって一緒に暮らすようになった人だ。
七瀬は人の縁をなにより大事にしたいと思っている。
(私、現金かな……)
自分ではそれほどわがままを言っているつもりはないのだが、ヨガを中心とした生活で宗吾のことが二の次になってしまっているのは確かだ。
この辺のバランスをどう考えるか、七瀬一人で答えが出せる問題ではない気がしている。
「必要なときは言ってくれたら作るね。それと明日、池袋の早朝クラスに代行で入ることになったから……」
恐々と伝えたら、宗吾の顔が一瞬むっとしたような表情になったが、「わかった」と寝室に行ってしまった。
でも、カフェバーでのことを蒸し返すと、この平穏な空気が壊れてしまうかもしれない。ほっとしつつも、薄氷を踏む思いで七瀬は笑顔を作った。
「ただいま」
「七瀬さ、明日からもう弁当は作らなくていいよ」
「え?」
嫌みで言われたのだろうかと用心したが、彼の表情をじっと観察していたらそうでもなさそうだ。
ひとりで先に帰って、冷静に考えてくれたのかもしれない。
「毎日、朝早いのに大変だもんな。会社の近くにキッチンカーも来るし、割と安い弁当屋もできたから、そっちで済ませるよ。たまには社内の人間とランチに行ってコミュニケーションを図るのも大事だし。これでも、プロジェクトマネージャーだから」
「宗吾さん、マネージャーさんだものね! 負担はかけちゃうけど、でも必要なときは言ってね、できるだけ作るようにするから」
負担が軽くなることはもちろんうれしいが、宗吾が七瀬の仕事のことを前向きに捉えてくれたことがうれしかった。
「うん、ありがとう」
ありがとうという言葉の尊さを、改めて噛み締める。お互いに労り合えれば、結婚しても困難を乗り越えていけるだろうと思えるから。
宗吾とはどきどき意見が噛み合わず、その度にモヤッとしてしまう自分の気持ちを平らに保つことに意識を傾けてきた。
でも、人間が二人以上集まれば、意見の衝突や習慣の違いからぶつかることもあるだろう。それでも、宗吾は縁あって一緒に暮らすようになった人だ。
七瀬は人の縁をなにより大事にしたいと思っている。
(私、現金かな……)
自分ではそれほどわがままを言っているつもりはないのだが、ヨガを中心とした生活で宗吾のことが二の次になってしまっているのは確かだ。
この辺のバランスをどう考えるか、七瀬一人で答えが出せる問題ではない気がしている。
「必要なときは言ってくれたら作るね。それと明日、池袋の早朝クラスに代行で入ることになったから……」
恐々と伝えたら、宗吾の顔が一瞬むっとしたような表情になったが、「わかった」と寝室に行ってしまった。
