落ちこぼれ悪魔の扱い方

「美弥!」

与崎を置いて歩き出した時、背後から呼ばれた。振り向かないでいると、続けざまに声をかけられる。

「……悪魔に助けられたって言ってくれて、ありがとな」


いいの、気にしないで。


思いついた言葉は、どうしても外に出てくれなかった。ただただ、悲しかった。


いいじゃないか、計画に賛同してもらえたんだから。本来の目的は、達成できたのだから。


自分で自分を説得しようとしても、なぜか心が聞き入れてくれない。


与崎の中の美弥が、どんどん実物と乖離していく。


特に悲しいことじゃない。

それなのに、胸が締め付けられて絶望的な気分になる。


美弥は歩みを止めた。

与崎が追い付くのを待って、顔を上げる。

何とかいつもの笑顔を浮かべられた。

「気にしないで」

無感動な自分の声が、他人の声のように耳に入ってきた。