落ちこぼれ悪魔の扱い方

美弥は今度こそ本気で戸惑った。


与崎はいつもこうだ。

冷たい態度をとったかと思えば、急に寄り添うような言葉をかけてくる。

しかも、こちらが弱っているタイミングで。


……普段は不器用で無愛想なくせに。何か裏でもあるのかな。


「急にどうしたの?」

不信感を露にしないように気を付けて、自然なトーンで訊いてみる。

「『お前に何が分かるか』って思ってんだろ」と与崎は苦笑した。

「確かに、俺に美弥の心は分からない。……分からないけど、同じような経験はしたことがある」

「身内を亡くした、ってこと?」

美弥は遠慮がちに尋ねた。


与崎は否定も肯定もせず、「どうだろうな」と茶化すように笑う。

しかしそれも一瞬のことで、与崎はすぐに真剣な雰囲気に戻った。

「ただ、これだけは言える。復讐は美談じゃ片付けられない、ってな」

あれだけ気に障っていた、仇討ちについての話題。

それを持ち出されても、美弥は不思議と怒りを感じなかった。

その代わり、与崎に対して得体の知れない深遠さを感じた。


……与崎は、何かを背負っている。

 そう直感したからだ。