神社の奥、本殿の近くまで来て、やっと美弥は手を離した。
与崎は素早く手を引っ込め、美弥を見つめた。
多分睨まれている。
美弥は薄く笑いながら、「ごめん」と手を合わせた。
「でも、どうしても与崎も連れて来たかったの。私が辛くなった時、よく来てた場所だから」
そう言って美弥は、本殿の後ろを指差した。
与崎も振り返り、美弥が指差した先を確認する。
「なんだ? ……公園か?」
美弥は黙って頷いた。
この神社は、本殿の後ろに公園がある。
周りを木立で囲まれているため、微妙に人目につかない。
知る人ぞ知る、ってやつだ。
公園といってもシンプルな滑り台とブランコ、半分埋まった謎のタイヤしかないショボいものだが、美弥はむしろその質素さが気に入っていた。
美弥は意味もなく滑り台に駆け寄ると、階段を上っててっぺんに立った。
色褪せて、ボロボロの滑り台。
それでも高さは大人の背丈くらいあるため、上るとぐっと視野が広がる。
与崎を見下ろせるのも楽しい。
棒立ちになっている与崎に視線を送り、美弥は微笑んだ。
美弥は滑り台の柵に寄りかかり、今度は視線を空に向ける。
空の色は、藍が優勢だ。
夜が迫ってきている。

