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10分ほど歩き続け、美弥はある建物の前で足を止めた。
「ここ、ちょっと寄ってもいい?」
与崎は建物を見上げ……凍りついた。
「お前正気か?」
与崎が疑うのも無理はない。
何せ、目の前にそびえ立つのは石造の鳥居なのだから。
「ここって神社だろ」
与崎は寂れて人気のない神社を一瞥し、咎めるように言う。
「そうだけど?」
美弥も悪びれず、負けじと言い返した。
「廃神社だから、お参りに来る人もいないよ。それに、悪魔が神社に入っちゃいけないって決まりがあるわけじゃないし」
「やっぱりお前、お祓いで俺を追い出そうと……」
「そんなんじゃないってば」
美弥はうんざりして嘆息した。
「てか、悪魔にお祓いって効くの?」
「効かないけど」
与崎は即答する。
「でも悪魔って呼ばれてる以上、神社みたいな場所に入ったら罰当たるんじゃ」
「バチならもう当たってるようなものでしょ。悪魔になってんだから」
いつまでも神社の前で言い合いをしているわけにもいかない。美弥は強引に与崎の手首を掴んだ。
与崎の腕がビクリと跳ね上がる。
少し遅れて、与崎は「ちょっ、お前……」と声を上げた。
「強制連行ね」
「うわっ、お、おい、美弥! 離せっ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ与崎を無視して、美弥は与崎を神社の中まで引きずっていく。
パーカー越しに感じる与崎の手首は、やっぱり細くて骨張っていた。

