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「ああ、帰ったのか」
家に帰ると、与崎がお馴染みの台詞で玄関まで出迎えに来た。
どこから引っ張り出してきたのか、ジーンズと灰色のパーカーを着ている。
ジーンズは確かに父のものだが、パーカーは……。
美弥の訝しげな視線に気付き、与崎は着ているパーカーに目を落とした。
「部屋にあったし、これも着ていいんだよな?」
「いいけど、多分そのパーカーは私のだよ」
「はぁ!?」
与崎は裏返った声で叫ぶ。
「俺、お前の服着てんの?」
「そうだけど」
「そうだけどじゃねえよ!」
与崎はドタバタと父の部屋に駆け込むと、スーツの上着だけを羽織って駆け戻ってきた。
パーカーは脱いだらしいが、まだ狼狽しているらしい。
ボタンはかけ違えているしベールは僅かにずれている。もちろん顔は見えないが。
走ってきた与崎は息を切らしていたが、多少落ち着いたのか疲労のため息を長く吐いた。
「なんでお前、あんな地味なの着てんだよ。もっと一発でお前のだって分かるような服着ろよ」
理不尽に怒られ、美弥はムッとする。
まるで、私が悪いみたいな言い草じゃないか。
部屋に私物を置きっぱなしにしていたのは美弥が悪いと言えなくもないが、そこは棚に上げ、美弥は露悪的に微笑む。

