翌日。昼休みに咲子と昼食をとっていても、美弥はまた与崎のことを考えていた。


距離感が振り出しに戻ってしまった、ということもなく、今朝の与崎は至っていつも通り。

恩着せがましく「サービスでリビングも掃除してやる」とかほざいていたが、果たして彼は掃除機を見つけることができるだろうか。

……まあ、そんなことはどうでもいい。


問題は、どうやって与崎を納得させるかだ。


薄々勘づいてはいたが、昨日の会話ではっきりした。

与崎は相当なお節介焼きである。

だから契約には含まれていなくても、復讐した後の美弥のことを案じてくれているのだ。


まあ、『仇討ち』という願いを叶えてもらえればそれでいいのかもしれないが、その親切に報いるためにも一応、安心させてあげた方がいい気もする。

成仏したらもう会えないことだし。


真名川を殺し、美弥は救われて幸せになり、与崎も安心して成仏し、それでハッピーエンド。

現時点での美弥の目標はそんな感じだ。

「……とはいえ、結構大変だよなあ」

思わず小声で呟くと、目の前でお弁当を広げていた咲子が「ん?」と反応した。

「何か言った?」

「あ、いや、何でもないよ」美弥は笑顔で誤魔化したが、咲子は怪訝そうな目でじっと美弥を見ている。