落ちこぼれ悪魔の扱い方

点字ブロックに顏をぶつけた衝撃と、耳を裂かれるような甲高い警笛──駅のホームで突き飛ばされたときの記憶だな、と美弥はすぐに思い当たった。


目の前の文字列がぐにゃりと歪んだ。

黒い感情が胃の辺りから湧き上がってくるのを感じる。

「クソ親父」

そう呟いた美弥の声は震えていた。

怒りか、あるいは恐怖のためか。

「こんな雑誌の取材のために変な宗教団体に潜入して殺されて、馬鹿じゃないの。私が駅で突き飛ばされて殺されかけたのも、本当はあんたのせいなんでしょ」

独りで怒鳴り散らかしても、特に怒りは晴れない。

美弥はやるせない思いで溜め息を吐いた。


強く握り締め過ぎたのか、メモ帳のページにはひびのような皺ができている。

美弥はとにかく落ち着くため指先でメモの皺を伸ばしていたが、『教祖について』という項目が目に入ってふと指を止めた。

明らかにその項目だけ文量が多く、その分乱雑としている。

悪筆も相まって、解読できたとしても五割くらいだろう。