部屋は見違えるように綺麗になっていた。
あれだけあったゴミ……もとい遺品は整理され、ちゃんと生活できるような空間になっている。
「すごい、床が見える……!」
美弥はひたすら感心したが、一箇所だけ気になるところがあった。
「なんでこれだけ床に置きっぱなしなの?」
美弥はそう言って、床に放置されていたペーパーナイフを拾い上げた。
持ち手に凝った装飾がされているから、多分父が買った骨董品だろう。
「こういうものから片付けないと、危ないでしょ」
「仕方ねえだろ」と与崎は不服そうに言った。
「だってそれ、純銀だし」
「ふうん。純銀なんだ、これ。で、何かダメなの?」
与崎は「それは……」と言い淀み、何か言うのを躊躇っている。
「ねえ、なんで?」
美弥がもう一度訊くと、与崎は諦めるように息を吐いた。
「純銀は、悪魔の弱点なんだよ」
悪魔の弱点。そういえば、父の手帳にそんな項目があったような気がする。
あいにく美弥は読み飛ばしていたが。

