咲子は小学校からの友人。
隙がなく距離を置かれがちな美弥を無邪気に「美弥ちゃん美弥ちゃん」と慕ってくれたので、美弥にとっても接しやすい相手だった。
今は同じクラスで席も前後なので、こうして毎朝話しているのだ。
美弥が席に着くや否や、咲子は早速喋り始める。
「美弥ちゃん聞いて! 昨日帰る途中でね……」
咲子の話に相槌を打ってはいるが、本当のところ大して頭には入っていない。
身振り手振りを交えながら話を聞かせてくれる咲子には申し訳なかったが、美弥が考えているのは与崎のことばかりだった。
『行ってきます』と言った後、返事が帰ってくるのは新鮮だった。
まあ、もっとも与崎の場合はリビングから『ああ』と面倒そうに返してくるだけだったが……。
「ちょっと、美弥ちゃん! 聞いてる?」
咲子に大きな声を出され、美弥はやっと我に返った。
辺りを見回すと、数人の生徒がこちらの様子を伺っている。
咲子の大声に驚いたのだろう。

