落ちこぼれ悪魔の扱い方

「おい、どうなんだ?」

与崎に畳みかけられ、美弥は即答した。

「親父のだよ」

「嘘つけ」

「本当だよ。与崎、着れば?」

「誰が着るか!」

与崎は立ち上がった。

その形相があまりにも必死で、美弥は思わず噴き出す。

「何だよ、いきなり笑い出して」

「あはは、ごめんごめん」

笑いが落ち着くのを待ってから、美弥は言った。

「私たち、案外何とかやっていけそうな気がするなあって思っただけ」

「……は?」

与崎はぽかんとしている。

「私、さっきまですごく不安だった。同居の距離感とか何も分かんないし、喧嘩して家飛び出すようなことになったらどうしようって」

「いや、家主お前だろ」

「ちょっと黙って」

美弥は咳払いして、与崎の顔を真正面から見据えた。

「だから本当に、与崎で良かった」

美弥の真剣な思いが伝わったのか、与崎は「いや、まあ……」と照れたように口ごもる。

「こちらこそどうも。泊めていただいて」

「なんで敬語?」

「お前が妙に真面目なこと言うからだろ」

「私は常に真面目だけど?」

美弥がとぼけると、与崎は微かに笑い声を上げた。

「……それが本気だったら、お前相当イカれてるぞ」

一転して明るい表情を浮かべながら、美弥は「何それー」と茶化す。

さっきまでの気まずさが嘘のように、和やかな空気が広がっていた。