落ちこぼれ悪魔の扱い方

もちろんそんなことは言えないので、美弥は「良かった」と精一杯の笑顔を浮かべた。

「じゃ、ちょっとついてきて」

美弥はそう言って、与崎を父の部屋の前まで案内した。

「この部屋、使っていいから。ついでに片付けといて」

ドアを開けると、与崎は愕然とした様子で固まった。

「どうしたの?」

理由は粗方察しがついたが、一応尋ねてみる。

与崎は静かに部屋を見回し、呟いた。

「足の踏み場がねえ」

「だから言ったじゃん、片付けてって」

「いや、片付けるっつっても、これは手の付けようがないだろ」

与崎は美弥を振り返り、「何ニヤついてんだお前」と悪態をついてくる。

「お前の家だろ、お前も片付けろよ」

「私もやるだけのことはやったけど。……でも私、忙しいじゃない? 学生だし。どうせ与崎は日中暇なんだから、与崎がやってよ」

「俺だって暇なわけじゃ……」

「親父の私物しかないから、いらないものは捨てちゃっていいよ。あ、シーツは後で来客用のやつ持ってくるから。それじゃあごゆっくり」

美弥は強引に与崎を部屋に押し込み、ドアを閉めた。

「ちょ、待っ」という与崎の抗議がシャットアウトされる。

美弥はドアが閉まるや否や、浮かべていた悪戯っぽい笑みを消す。

「……皿洗お」

一人でいる時のローテンションに戻り、美弥は疲れた声で呟いた。