鏡を確認した与崎は、「まずいな」と呟いた。
「まずいって、何が?」
「この鏡半分割れてんだろ」
与崎は使い物にならなくなった鏡をこつこつと叩きながら言う。
美弥は、「まあ、私が壊したんだけど」と前置きした上で尋ねた。
「何かダメなの?」
「この幅じゃ、俺通れないんだけど」
確かに、上半分よりは損傷が少ない下半分にも多くの亀裂が入っている。
完全に無傷なのは、鏡の三分の一くらいだった。
「帰れないってこと?」
「いや、無理矢理にでも通れば帰れるけど。俺が通った後鏡全体がぶち壊れて弾け飛ぶな」
与崎はさらりと恐ろしいことを言った。
「は? えーっと、なんで?」
「鏡と魔界を繋ぐ空間の面積が、鏡の面積よい小さいからだ。これだけの面積しかない鏡に無理矢理空間をつくると、空間の膨張に耐えられなくなった枠が歪みに歪んで弾ける」
「……何それ、よく分かんない。卵レンチンすると爆発するのと同じ原理?」
「まあ、それに近いかもしれない」
実は卵が爆発する原理を知らないので結局分からなかったが、とにかく危険なことには変わりないらしい。

