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「ところでさ、与崎って今日どこ泊まるの?」
夕食後、美弥は皿を洗いながら出し抜けに訊いた。
テーブルの上をぼんやりと眺めていた与崎は、「?」といった様子で顔を上げる。
「いや、普通に帰るけど」
「こういうのって住み込みじゃないの?」
与崎は「んなわけあるか!」とキレ気味に否定した。
「女子高生の家に泊まれるかよ。常識的に考えて、通いだろ」
「悪魔自体が非常識だと思うけど」
「くだらないこと言うな」
与崎に一喝された。
「来た時と同じように、鏡伝って帰る。だから基本、悪魔は依頼人の家に泊まったりはしない」
「私の家なら泊めても構わないけど」
「まだ言うか」と与崎は呆れたようにため息を吐いた。
「とりあえず、今日はもういいだろ。俺もう帰るから、鏡の場所教えてくれねえか?」
「えーでも、やっぱり泊まった方が……」
「俺が嫌なんだよ」
与崎が怒り出したので美弥は皿洗いを中断し、全身鏡が置いてある寝室まで与崎を案内した。

