教室に戻ってドアを開けようとしたとき、中から話し声が聞こえてきて美弥は手を止めた。
そっとドアの窓から教室を覗くと、クラスメートの女の子がまだ二人残っていた。
楽しそうにおしゃべりをしている。
「え、マジでヤバいよね?」
「それなー、ガチであいつらヤバすぎ」
何がヤバいんだろう。
美弥はドアから手を離し、なんとなくその二人の話に聞き入った。
大した話はしていない。
隣のクラスのカップルが別れたとか、何とか先生が最近太ってきたとか、そんな他愛もない内容だ。
教室に入るのは話を邪魔してしまうようで気まずいが、ずっとこうしてもいられない。
あらためてドアに手をかけたとき、中からまた声が聞こえた。
「てかさ、美弥ちゃん最近どうしたの?」
美弥は思わず固まった。
ここにいることがバレたのかと一瞬焦ったが、二人が美弥に気付いた様子はない。全くの偶然だったようだ。
「あの子最近ヤバくない? 髪もボサボサだし、咲子ちゃんに話しかけられても上の空だしさ。
え、なんか病んでんのかな?」
「さあ? 彼氏にでもフラれたんじゃない?」
うわマジかー、美人だもんね、と彼女は茶化したように笑う。

