落ちこぼれ悪魔の扱い方

周りに聞いている人もいないので、与崎は気兼ねすることなく幻聴と会話する。

「言ったけどさ。変に神格化してるわけじゃないよ? 与崎が情けなくてウブな悪魔だってこと、私、ちゃんと知ってるし」

穏やかな声で紡がれる、妙に切れ味の鋭い言葉。

毒舌まで再現されるとは、リアルな幻聴だ。


与崎は言い返す。

「情けないって、お前だって似たようなもんだろ。誘拐はされるし溺れるし、熱は出すし。挙げ句に過……」

「ちょっ、それ以上はストップ!」


美弥は身を乗り出して鉄格子を掴んだのか、ギシッと格子の軋む音がする。

それも目の前から聞こえた、ような……。


まさか、な。


与崎は恐る恐る顔を上げる。

そして、彫像のように動きを止めた。


目に飛び込んできたのは、透き通るような白い肌に、つやつやとした黒い髪。

長いまつ毛で扇情的に飾られた大きな瞳。


美弥が、立っていた。

いつもの綻び一つない笑顔を浮かべて。


「久しぶり。与崎」


鉄格子から離した手をひらひらと振り、美弥は朗らかに言う。

幻聴ではない、確かな美弥の声が、薄暗い牢獄にこだました。