自分は正義の味方じゃない。
ヒーローでも何でもない。
そんな当たり前のことを上から言われたとき、どうして与崎の心はあんなにも痛んだのだろう。
それはきっと、傲慢だったから。
自分は悪くないと、心のどこかでタカを括っていたから__。
『私を助けてくれたのは、悪魔でした!』
美弥の甲高い声が、与崎の脳裏に響く。
あの日、神社の裏の公園で美弥はそう叫んだ。
神に喧嘩を売るようなことを、神が見ている目の前で、美弥は平然と言ってのけたのだ。
それほどまでに、美弥は与崎を信頼してくれていた。
「違う、違うんだよ、美弥」
独り言がこぼれる。
与崎は罪悪感に頭を抱え、絞り出すような声で呟いた。
「俺、そんな大層な存在じゃねえよ……」
「誰が大層な存在だって?」
しっとりと落ち着いた、美弥の声だ。
それも頭の中に反響するような声ではなく、耳から聞こえてくるような声。
……幻聴もここまでくると面白くなってきた。
「お前が言ってくれたんだろ。俺に助けられたって」

