高坂が振り返る。
その瞳から、水晶のような涙が一粒こぼれ落ちた。
高坂は泣き笑いの顔で、少し赤くなった目元を拭う。
「また会いましょ。……三人で」
高坂がくるりと踵を返すと、上は恭しく扉を開けた。
扉の向こうに広がる闇に、高坂は迷いのない足取りで歩いていく。
続いて、上も。
二人の姿が陽炎のように闇の向こうへ消えると、扉はひとりでに閉まった。
「……アンリ先輩」
灰田はもう一度、蚊の鳴くようなか細い声で呟く。
「僕も、すぐにそっち行きますんで。ひとみ先輩と一緒に」
「ね?」と灰田は与崎に問いかける。
「……もちろんだ」
与崎ははっきりと答えた。
高坂がくれた祈りを、無下にはしない。
絶対にこの牢獄から抜け出してやる。
灰田を連れて。
そのためにはまず、『自分以外の人のために願いを使う』依頼人を探さなくては。

