高坂は、「ひとみ君は?」と下手な明るい声で尋ねてくる。
「何になりたいの? お金持ちとか、人気俳優とか、天才科学者とか? いや、ここは変わり種で人間以外ってのもあり得るわね」
生まれ変わったら何になりたい、か。
思いもよらない質問だ。
勝手に話を進める高坂に苦笑しつつ、与崎はちょっと真剣に考えてみる。
才能がある人や容姿に恵まれた人は、確かに憧れる。
何不自由ない生活をしたいという願望も、ないことはない。
しかし高坂に提案された選択肢は、どれもしっくりこなかった。
そもそも俺は、何になりたかったんだ?
人間だった頃、将来の夢なんて考えていなかった。
毎日を生きるのに必死で、遠い未来のことを夢想する余裕なんて全くなかった。
「……。俺は、もう一度俺になりたいかな」
「ん?」
高坂は理解不能といった表情をする。
「もう一回過去を経験したいってわけじゃないわよね?」
「当たり前だろ。あんな地獄は二度とごめんだ。
……俺はただ、もう少しまっとうな環境で、『人間としての俺』をやり直したいだけ。
普通の生活が送れてたら自分はどうなってたのか、ちょっと体験してみてえ」

